2015年2月12日
日本のアパルトヘイト導入を願う新聞コラムニスト
大手保守派新聞のコラムに移民労働者を増やす必要があると書き、1970年代の南アフリカを手本にあげる。
【東京】日本屈指の大手新聞が、今週初めの祭日「建国記念日」の機会にアパルトヘイトを擁護する著名作家のコラムを掲載した。日本は外国人労働者を入国させて人口減少問題を解決すべきだが、本国人とは分離して住まわせなければならないと彼女は書いた。
コラム筆者、曽野綾子氏は日本でよく知られた小説家にして、安倍晋三首相の親しい助言者でもあるが、その首相はナチス共鳴者や人種主義者らを閣僚に指名して国の内外で批判されている。
曽野氏は内閣府の教育再生実行会議の委員でもあり、その会議で妊娠した女性は退職すべきであるという発想を奨励した。
安部首相の胡散臭いお友だちのひとりにすぎないという人もいるかもしれないが、首相が注目する人物であることには疑う余地がない。
記事は2月11日付け産経新聞に掲載された。産経は、(印刷版)発行数160万部で、日本4番手の大手日刊紙と考えられている。
コラムの見出しは、「労働力不足と移民『適度な距離』保ち受け入れよ」となっている。
コラムは冒頭でISISを例に、他人種の文化や心情を理解することの困難さをあげている。それに続けて、人口構成に占める若年人口が減少しつづけており、日本は、労働力を、とりわけ増大しつづける老齢者人口の介護の担い手を必要としていると指摘する。筆者は、外国人労働者に老齢者介護を担ってもらうのに、厳しい特別訓練の必要がないのであり、労働移民を認めねばならないと提言する。
ここまでは、取りあえずいいだろう。
「大手紙がこのような戯言を掲載するようなら
この国の人種主義者を勢いづけます」
|
だが、曽野氏はつづけて、「移民としての法的身分は厳重に守るように制度を作らねばならない。ここまで書いてきたことと矛盾するようだが、外国人を理解するために、居住を共にすることは至難の業だ」と付け加える。
筆者は、もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の「実情」を知って以来、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになったと指摘する。
彼女は主張を裏付けるために、「人種差別の廃止以来、黒人が住むようになったヨハネスブルグのマンション」の例をあげる。つづけて「黒人は基本的に大家族主義だ」と説明し、黒人がどんどん家族を呼び寄せてマンションを乗っ取り、設備を台無しにして、最後には白人がすべて逃げ出したという。
曽野氏は、このできごとの正確な場所と時をうかがわせるヒントを与えなかった。この逸話を検証するためのマンション名と具体的事実の一切が明かされていない。それでも彼女は、断定的な口振りで、「爾来、私は言っている。『人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい』」と結んでいる。
デイリービースト誌は事実確認のために、作品掲載紙の産経を通じて著者に、また内閣官房、内閣広報室に接触を試みた。返答はなんら得られず、産経は連絡先情報の提供も質問状の伝達も拒否した。
曽野氏は論争に縁のない人士ではない。女性は子どもを持ちしだいに退職すべきという主張や彼女の出産休暇反対論は、安部首相が大いに自慢する「ウィミノミクス」、すなわち男女共同参画政策と衝突するようである。
それにしても、曽野氏のアパルトヘイト同調コラムは、お気軽な人種主義が体制によって許されているように見受ける日本においてさえ、かなりの異論を招いた。
この記事を取りあげたツィッターまとめサイト[「曽野綾子さんの産経新聞コラムがゲスすぎて大炎上」]は、休日であるにもかかわらず、コラム掲載日に110,000閲覧数を記録した。コメントは基本的に、次に貼っておくツィートの趣旨に沿った否定的なものだった…
本誌は産経に対して、同社サイトが公に掲載している「新聞倫理綱領」に、新聞制作のあらゆる側面において「人権に最高の敬意を払い、報道を誤ったときはすみやかに訂正し、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講ずる」と指摘し、コラムについて質問した。
産経はデイリービーストにこう答えた――「曽野綾子さんのコラムは連載記事であり、ご本人のご意見として、そのまま掲載いたしました。この件に関して、さまざまな意見があるのは当然のことです」
産経新聞は、日本で指折りの保守系新聞であり、安倍政権と緊密に足並みを揃えていると伝えられている。同紙は日本における国家主義メディアの最前線に位置し、国家による戦争犯罪の歴史を歪曲したり、過小評価したりしている。
産経新聞社史の初期の社長のひとりは、その回顧録に、第二次世界大戦中、女性たちを軍部の性奴隷として徴募したことに自分自身が関与したと書いた。同紙は、その報道のすべてから回顧を削除しているようだ。
同紙は昨年、2011年3月の地震と津波の背後にユダヤ人たちがいて、ホロコーストはイスラエル国を創設するためのでっち上げだったと主張する書籍類の反ユダヤ人広告の掲載を謝罪した。
日本紙の多くと同じく、社論(新聞社編集部の公的な見解)と記者たちの立派な仕事は必ずしも一致しない。産経の報道陣は3・11災害と核メルトダウンのあと、非常に充実し、強力な調査報道をいくつかものにした。だが、管理部門と記者たちには、異なった優先順位があるようだ。
このコラムに、Contemporary Japan[『現代日本』]の著者、ジェフ・キングストンはさほど驚かなかった。「これは、(日本の)神話とフィクションが絡み合った栄光と恥の過去を祝う日、建国記念日に掲載されました」と、彼はデイリービーストに語った。
産経はこのアパルトヘイト賛辞を掲載したことによって、もたもや「国家の過激派に突出した論拠を提供しました」と、キングストン氏はいい、密室で曽野綾子氏が安部首相にどのような助言をしているのだろうか、他にも彼女はどのような時計の針を逆戻りさせているのだろうかと考えて初めて、世人は身が縮む思いをすると付け加えた。「安部首相は日本の移民受け入れ枠拡大を繰り返し求めてきましたが、移民労働者たちには、もうひとつの考えを抱く恰好な理由ができました」と、彼はいう。
そのとおり、懸念を示す人がすでにいる。
日本に来て、通信分野で働く30歳の南アフリカ人女性はコラムを見せられ、頭を振り、「わたしはすでに職場で微妙な人種主義とたっぷりやりやっています。大手紙がこのような戯言を掲載するようなら、この国の人種主義者を勢いづけます。わたしにはすでに十分です。たぶん、わたしたちの全員が出国し、日本が勝手に独自の外国人嫌悪・認知症で堕落するがまま放置しておくべきなのでしょう。日本の性差別が人種主義と同じほどひどいなら――絶望のようですので――女性が出産を望まないのも不思議ではありません」と語った。
日本は、首相と大手紙のひとつが揃って、人種差別が自分たちの身近に働く個々の人たちを巻き込んでいるときでさえ、人種主義を糾弾する必要があるとまったく感じていない実に悲しい時期にある。人種主義が票になり、新聞が売れるからだろうか? 同じ見解だからなのだろうか? たぶん、少しは両方の理由なのだろう。だが、日本が存続するために、外国人労働力を導入する必要があるなら、国が取り組まなければならない問題であり――ゲットーを築いても、答えにならない。