2009年6月21日日曜日

世界の終わりの歌

世界が終わる日
ミツバチはクローバーの周りを飛び
漁師はほのかに光る網をつくろう
幸せなイルカは海上にジャンプ
若いツバメは雨樋をかすめて遊び
ヘビはいつものように金色の肌

世界が終わる日
ご婦人たちは傘さして野原を歩き
飲んだくれは芝生のはずれで眠くなり
街路で
野菜売りは声を張りあげる
黄色い帆の小舟は島に近寄る
バイオリンの調べは空中に余韻となって
星の夜に流れ入る

稲妻と雷鳴を期待した輩たちは
あてが外れる
しるしと大天使のラッパを期待した輩たちは
今の時代にありうるとは信じていない
太陽と月とが天上にあるかぎり
マルハナバチがバラを訪れるかぎり
バラ色の幼児が生れるかぎり
今の時代にありうるとは誰も信じていない

ただ白髪の老人だけが、かつては預言者だったが
忙しすぎて、今は預言者ではなく
トマトを
結束しながら繰り返し言う
世界は終わりに突き当たることはないだろう
世界は終わりに突き当たることはないだろう

―― チェスワフ・ミウォシュ
   Milosz, Czeslaw(1911-2004)

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